通行手形をいただいて…
岡崎や名古屋に何度も足を運び、ヤマハ・ジャズクラブやライブハウスで熱いステージを繰り広げ、また内田病院で長期間にわたり静養し、ドクターズ・スタジオでの練習で、復活への栄喜を養ったトコちゃんこと日野元彦(ds)が1999年5月、53歳の若さで、亡くなりました。私は、堪らなく悲しくて、いつまでも日野元彦を覚えていて欲しいと、原稿用紙70枚ぐらいの『日野兄弟物語』を書き上げました。それを読んでくれた内田修先生は、「いつか本にしなさい」とおっしゃってくれました。そして取材する時、困らないようにと、名刺の裏に「高木君を頼む」と書いてくれました。これはいわゆる通行手形であり、多くのミュージシャンをはじめ関係者にお見せすることにより、取材がスムーズに協力頂けました。おかげで、1960年代の銀巴里セッションの話やNY修行話など熱く生きたトコちゃんのジャズ人生を『東京JAZZ』にうまく書き上げることが出来ました。
先生は日本のジャズ
以前、岡崎の美術博物館で行なわれた企画展「ジャズの街角」を見に岡崎に行きました。その時、かつて内田病院があった岡崎の康生通りを歩かせて頂きましたが、街の皆さんが内田先生や内田病院でのジャズメンのことをよくご存知で驚きました。岡崎にはジャズは自然に地元に根付ており、街全体がアットホームで温かい印象を受けました。ニューヨーク、パリ、ロンドンなどでは、ジャズ文化のために税金を投入しています。残念ながら、日本においては単発的なコンサートはあっても、行政がジャズ文化を本当に理解し、広げたり、街づくりに役だてようという動きは、ほとんどないのが現状だと思います。岡崎市が「内田修ジャズコレクション」を広げていくのは、大変素晴らしいことだと思います。現在、私は『ドクター・ジャズ内田修物語』を執筆中です。2003年、夏頃には出版されますが、先生を書けば、それは日本のジャズそのものを書くことになると実感しています。
新しいものを求めてほしい
2002年のグラミー賞の8部門を、ジャズをルーツとする女性ヴォーカル、ノラ・ジョーンズが受賞しました。私たちは、21世紀初頭を生きているわけですが、音楽の世界にも新しい循環というか、いい変化が訪れている時期だと思います。その一つの現象がノラ・ジョーンズの大活躍だと思います。70歳を過ぎた先生もいつも新しいものを求めインスピレーションを大切にています。皆さんもそういった感覚で音楽に親しんで欲しいと思います。
最後に先生、いつまでもお元気で、そしてまた新しい素晴らしいミュージシャンを紹介してください。
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高木信哉(たかぎ しんや)
1954年東京生まれ。音楽ライター。マイルス・デイビスの初来日を10歳で体験。日野皓正・日野元彦の足跡と東京のJAZZの歴史を追った『日野兄弟物語』、『東京JAZZ』で注目される。現在、ジャズ・ディスク大賞選考委員、「東京JAZZ」フェスの編集長を務め、他多数執筆。

『東京Jazz』(高木信哉著)、『ニューヨークJazz』(小川隆夫著)と続いた三一書房のジャズストーリー三部作の完結編がいよいよ9月末に発売となる。タイトルは、『ドクターJazz』(高木信哉著)で、渡辺貞夫、日野皓正をはじめとする日本のジャズ・ミュージシャンを支え、ケイコ・リー、綾戸智絵、寺井尚子を世に送り出したドクター・ジャズこと内田修の生涯を描いているが、彼の人生そのものが日本のジャズの歴史であり、ジャズに対する日本一の情熱が伝わってくる。予価2800円+税 発行:東京キララ社 発売:三一書房

『東京ジャズ』高木信哉著 三一書房
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