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守屋純子ジャズ講座

レポーターは、りぶらJ.J.サポーターの長坂さんです。
| 平成22年5月15日 Libraホール(レポート:長坂) |
こんにちは。Beanzz(ビーンズ)のサポーター団体“りぶらJ.J.サポーター”の長坂です。今回はジャズ入門講座です。これからジャズを楽しみたいと思っている人が、どんな風に聴いたら良いのか、どうやって楽しめば良いのかを、ジャズピアニストで作曲家、そしてアレンジャーでもある守屋純子さんにわかり易く講義していただきました。
冒頭、主催者からのあいさつや紹介はなく、ベージュのスーツに爽やかなブルーのインナーの守屋さんがいきなり登場しました。守屋さんは、「最近はカフェなどいろいろな場所でジャズがかかっている様になってきたけれど、じゃあ“日本はそれほどジャズが盛んなのか?”というと疑問に感じます。今日は、ではどうやって聴いたらもっと楽しいのかを話していきたいです。」と言われ、講座が始まりました。
1. 即興演奏ってどうやって成り立っているのでしょう?
講座前半は、ジャズと他の音楽との違いから、即興演奏の成り立ちまでのお話でした。守屋さんはジャズを弾き始めた頃、あるミュージシャンの曲を耳コピして演奏できるようになり満足していたのですが、同じミュージシャンの別のアルバムの同じ曲を聴いて内容の違いに驚き、そして即興演奏について知った、ということでした。守屋さんのような人にもそんなことが!、とわかると、何か親しみがわいてきたのは私だけではないと思います。
○リズム…ジャズは裏拍が強いところに特徴がある。つまり、リズムを裏拍にすれば何でもジャズになり得る。
守屋さんは「キラキラ星」や「トルコ行進曲」などを例に挙げて演奏。あっという間にクラシックがジャズに変身しました!他にも「オン・ザ・サニーサイド・オブ・ザ・ストリート」を口ずさみながら手拍子で表拍と裏拍の違いを表現したり、小学生に「イン・ザ・ムード」を指導した時のエピソードを話して下さったりしました。
○ハーモニー…ジャズには独特の不協和音がある。
守屋さんはホワイトボードに「夕焼け小焼け」の基本的なコード進行を書き、まず表拍で普通に演奏します。そして、
@リズムを裏拍にして演奏
雰囲気はガラッと変わります。でもコードやメロディーがもとのままなので、まだジャズ感はあまりありません。
Aテンションをつけて演奏
テンションというのは日本語で「緊張感」という意味だそうです。守屋さんは、まずC(ドミソ)の和音を弾き、さらにそれにいろいろな音を加えていき、「全部Cです。」と説明した後、多彩なCだけの伴奏で即興演奏。それから「夕焼け小焼け」にテンションをつけて演奏されます。だいぶジャズ感が出てきました。
Bリハーモナイズ
リハーモナイズとは、基本の3和音に代理和音を加えて、もう少し複雑にすることだそうです。実際に「夕焼け小焼け」で演奏していただくと、和音の動きが滑らかになって、音が深くなった気がします。隣に座っていた小学生の男の子が、「あ、きれいになってきた。」とつぶやきました。
Cキーを換える。
さらにキー(調)を換えてみると、明るくなったり重くなったりして、またイメージが変わりました。これでまたバリエーションが増えるそうです。クラシックと異なり、演奏者によって選ぶキーも違うので、比べてみると楽しいとのことでした。
○リズムパターン…アップテンポの曲をバラードで演奏するなど、リズムパターンを変えて演奏することは、クラシックではできないが、ジャズの中では可能。
守屋さんは「夕焼け小焼け」のリズムパターンをかえて演奏。スイング、バラード、ワルツ、ボサノバと、次々に変化します。さらに同じスイングでも遅くしたり速くしたりすることで受ける印象が変わります。
○メロディー…ジャズではアドリブとしてメロディーを応用する。
これも「夕焼け小焼け」を例に挙げて演奏しながら説明していただきました。
@まずメロディー通り
Aフェイクして少しだけ部分的に変化……メロディーがかっこ良くなった感じです。
Bメロディーを少し変化させる……だいぶ変わりましたが、まだメロディーのイメージが残っています。
C更にもう少し大胆にかえてみる……もとのメロディーのイメージはもうありません。ここだけ聴くと、「夕焼け小焼け」とはわからないかもしれません。
D更に修飾を重ねていく……次第に左手の伴奏パターンも変化してきて、音の数もどんどん増えていきます。後から後から音があふれてくる様です。
こんな演奏を瞬時に作るなんて、とっても難しそう。でも守屋さんはこんな例えをして話してくださいました。
アドリブが出来るようになることは外国語の習得と似ている。私たちは日本語を普段台本なしで話しているけど、英語を話す時は、始めに少し考えてからでないと言葉が出てこない。でも慣れてくると単語が次々と自然に出てくるようになる。誰でも、いつからでも始めることができるが、早くから始めたほうがより上手くできるところも英語と同じ。
なるほど、とても納得のいく例えですね。
○譜面…最低限の譜面でアドリブ中心。とても長い曲でも、ジャズの楽譜はテーマとコードだけのシンプルなもの。コードさえあれば、それに基づくアドリブに譜面は必要ない。
守屋さんは、ホワイトボードでジャズの組み立てを説明されます。
@Theme →Aad-lib →BTheme
アドリブはテーマのコード進行に基づいて行われ、テーマの長さ×ソロ人数 となっているので、アドリブを聴くときは、頭の中でテーマを流しながら聴くとよくわかるそうです。

2. ジャズという音楽の特徴、聴き所について
講座後半はジャズの魅力や可能性についてお話しされました。
(1) 自由 …ジャズの1番面白いところは『自由』なところ。何を選んでも、どんな風に演奏しても良い。全ては演奏者に任せられている音楽。譜面を固定されていないので間違いもない。
守屋さんは「酒とバラの日々」を@スローAアップテンポBボサノバCキーを変える、と変化させて演奏します。こんなに自由な音楽は他になかなか無いそうです。でも実は日本人はこの『自由』が苦手、と指摘されます。なぜなら『自由』には『責任』が伴うから……そうなんですよね。思わず苦笑いです。
(2) 人間性 …即興演奏では演奏者の生き方、価値観など、内面性が瞬時に出てダイレクトに伝わる。
例えばおしゃべりな人はたくさん演奏(守屋さんもたくさん演奏される方だそうです)、無口な人は少ない音で聴かせる、でも普段おとなしいのに演奏すると豹変する人は、きっとそれがその人本来の性格なのだそうです。演奏で性格がわかるなんて面白いですね。ミュージシャンと直接話すことは出来なくても、音楽でどんな人なのか感じることが出来ると思うとうれしくなってきます。
(3) アンサンブル …ジャズのもう1つの大きな特徴はアンサンブルの音楽であるところ。即興性と同じ位重要な要素。自己主張だけではダメで、協調性も必要。アンサンブルすることによって、1+1が2ではなく、3にも10にもなる。
自分を表現して主張することと、お互いを思って協調すること…この一見正反対の要素が、どちらもとても大切…人同士のコミュニケーションと同じですね。
(4) ジャズを教育に …日本にはオリジナリティーを学ぶ教育システムが無い。伝統芸能や吹奏楽、勉強…どれをとっても先生の指導の通りマネしていれば進んでいくことができるが、海外へ出て行くと、一転して自己主張が必要になる。たとえば、ビッグバンドのソロなどは誰かに教わるのではなく、自分で考えることが大切。オリジナリティーを育てるためにも、今後ジャズを教育に取り入れることは非常に有効なのでは。
人間性を育てるジャズ!!すばらしいですね。守屋さんは子供達のビッグバンドを指導していて、自分で考えて表現する力やお互いに助け合う協調性が育っていくのを間近に感じたそうです。
(5) 地域性と時代性 …
〔地域性〕ジャズの醍醐味は何と言っても生演奏! 一緒に演奏するミュージシャンやお客様の反応でどんどん変化する、生きている音楽。それが感じられると、本当にジャズが楽しくなってくる。 生で聴く音楽、つまりジャズは地域と密着した音楽。もともとはアメリカの音楽だが、追いかけていては永遠に追いつくことは出来ない(向こうも進化し続けているから)。日本では日本のジャズをもっと出していくべき。
守屋さんは、ビッグバンドのコンクールなどで、全国のバンドを聞き比べる際、違いがよくわかると言われます。特に関西のバンドはスキを見てウケをねらったり、応援が派手だったりしてすぐわかるそうです。また、日本のジャズということから、内田先生は日本のミュージシャンをとても大切にした、だから岡崎市は日本のジャズにとってとても大切な場所なのだと話してくださいました。
〔時代性〕ジャズは時代ともリンクする。トップを走る人は時代とともに変化していく。今までは新しいスタイルを作った人がトップだったが、100年くらいのジャズの歴史の中でだいたいのスタイルが出てきて、今はそれぞれのスタイルを進化させていく成熟期に入っている。あえていうならば現代のトップはウィントン・マルサリスではないかと思う。
私がジャズを聴き始めてから○十年経ちますが、その間にもフュージョンやヒップホップなどが生まれています。そう考えると、自分もジャズの歴史を見てきた中の1人なのだなぁ…という不思議な気持ちになりました。これからも進化していくジャズを、ここ岡崎から感じていくことができたらうれしいです。

(6) 質疑応答
最後は質問コーナーです。みなさん積極的で、熱心に質問されていました。中でも、「アドリブが上手になる為にはどうしたら良いでしょうか?」という質問には、
@過去のジャズを聴いてマネする。A理論的に勉強する。B自分で書いて作曲して弾いてみる。
この3つのポイントを実践していくと良いとのお答えでした。但し、3つの比率、バランスは人それぞれだそうです。実はアドリブに憧れて、Aに挑戦しては挫折している私。@やBからがんばってみようかな?と思います。
10分間の休憩を挟んでの後半はお楽しみのライブです。照明が暗くなり、会場の雰囲気も少し変わります。
[1曲目 ♪ A列車で行こう] 登場してすぐ弾き始めた一曲目。壮大なアルペジオと和音に圧倒されながら曲名を考えているうちに、おなじみのテーマが軽快に流れてきて、「ああ、」と思います。ウォーキングベースにのせてアドリブが始まり、やがて和音のバッキングになり次第に激しく変化して中間部のテーマに突入!2回目のテーマはすこしフェイクして、転調してラスト!!有名な曲でメロディーを知っている分、今日の講座前半の内容が具体的によくわかり、変化を楽しんで聴くことができたのではないでしょうか?
[2曲目 ♪ サウザンド・クレインズ] ここで守屋さんご自身によるMC。オリジナル曲というのは海外では1番喜ばれるそうです。何故ならその人がよくわかるから。この曲は守屋さんのおば様が復刊させた「さだ子と千羽鶴」のイメージで作曲されました。穏やかで美しいメロディー、でも優しさの内に秘めた強さのようなものが伝わってきます。次第に羽ばたいて舞い上がるような感覚に包まれて、ラストは心地よいテンションの中に、静かに平和を祈る心を感じて、胸がいっぱいになりました。ふと、守屋さんの「日本のジャズ」という言葉が心に浮かんできました。
[3曲目 ♪ ダンシング・パペット] この曲は守屋さんの曲のなかで、1番いろいろな人に演奏されているそうです。激しいアルペジオのイントロに続く短調のワルツ(私のツボ)を聴きながら、これがサックスだったら?トランペットだったら?ビッグバンドだったら?とあれこれ想像すると、ワクワクしてきます。是非プレイヤーやアレンジによる違いを比べてみたいなあ、と思いました。
[4曲目 ♪ ノクターンOp.9No.2] 今年はショパン生誕200年ということで、ショパンのノクターンをジャズにアレンジです。曲名やショパンについて知らなくても、CMなどでおなじみのこの曲は会場の皆さんも聴いたことがあるかと思います。イントロはジャズのスケールで始まって、ウォーキングベースと和音でバッキング。守屋さんのトークのような軽やかで爽やかなノクターンです。各フレーズの終わりのコードがとてもカッコ良くて、最後部分のアレンジは美しく、うっとりしてしまいました。
[5曲目 ♪ オーバー・ザ・レインボー] 今度は逆にジャズの曲をショパン風にアレンジです。守屋さんはショパンのエチュードの1番を弾いている時にインスピレーションを得て作ったそうです。右手でエチュード風のアルペジオを弾きながら左手でメロディーを演奏します。なるほどぴったりはまっています。やがてソフトスイングにかわり、中間部は原曲と違って重厚な感じです。そしてノクターンの様な繊細なラスト。一曲の中にいろいろなショパンが詰まっている感じでとても楽しかったです。
[6曲目(アンコール) ♪ スターダスト] 鳴り止まない拍手にこたえてアンコールに演奏して下さったのはスターダストでした。クラシック音楽の中にもテンションが含まれるものがあり、ドビュッシーはその代表といって良いそうです。今回はスターダストをそのドビュッシーの「映像」スタイルで演奏していただきました。「水の反映」を思わせるイントロに、おなじみのスターダストのイントロが違和感なく溶け合っていきます。心地よいソフトスイングから「映像」風右手アルペジオと左手メロディーへ。音の1つ1つがキラキラした光の粒になって会場に広がっていきます。そして大迫力の後半、ラストは美しい3度の動き…聴いている方は夢の中にいるようですが、演奏する為には相当なテクニックが必要だと思います。いろいろな意味でため息の出る演奏でした。

今回は入門講座ということでしたが、「ジャズってなんだろう?」というところから始まり、成り立ち、楽しみ方、特徴、聴き所、と盛りだくさんの内容であるにもかかわらず、とてもわかりやすく、楽しく参加することができました。1回だけで終わってしまうのはもったいないような気がします。是非続編をお待ちしています!
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