オープンリール方式の録音テープ847本は、1950年代から1990年代後半に至る日本のジャズ史の側面を記録した貴重な内容のものです。
コレクションの中には、内田氏が30代半ばの頃、夜行列車で郷里岡崎から東京まで手に下げて運んだソニー製テープレコーダー〈777〉で収録された銀座シャンソン喫茶「銀巴里」での「新世紀音楽研究所」のメンバーによる実験的なジャズ演奏を捉らえたものがあります。これは、その後の日本のジャズシーンをリードしていく高柳昌行、菊地雅章、日野皓正、山下洋輔らの若き日の貴重な演奏記録であり、永く後世に残される宝物です。
また、内田氏の主宰によって、1964年から1997年まで33年にわたって行なわれた150回に及ぶ「ナゴヤ・ヤマハ・ジャズクラブ」を収録したテープがあります。コマーシャルリズムに流されることなく、内田氏の強い信念に裏付けられた内容で構成されたこの例会は、日本のジャズを真っ正面から捉らえたものであり、ここで行なわれた演奏を記録したテープは、日本ジャズ史の金字塔として多くの人に聴き継がれてもらいたい日本の文化資産です。

1993年1月11日に内田修氏から岡崎市に寄贈された内田修ジャズ・コレクション。その日、内田氏は親しくしていたジャズ・ミュージシャンを伴い、市長室で当時の市長に目録を手渡しました。その後、自宅に戻り、長年親しんだドクターズ・スタジオで最後のライブを行いました。演奏したのは、テナー・サックスの宮沢昭、ピアノの佐藤允彦、ベースの井野信義、ドラムの日野元彦。この日の貴重な演奏は、地元テレビ局の手により収録され、一部が放映されました。この演奏は、いつの日にか内田コレクションの中に納められ、あらためて人の耳にふれるかも知れません。
宮沢昭、日野元彦ともに残念ながらこの世を去ってしまったミュージシャンです。しかし、このように折りにふれ、行なわれたスタジオ・ライブは記録として残されています。時間の経過とともに価値を増すであろうテープに残された多くのミュージシャン達のメッセージ、全テープ855巻、その一巻一巻に日本のジャズの貴重な歴史が刻まれています。

ジャズコレクションでは、どうしてもLPレコードに関心が集中してしまいがちですが、847巻にのぼるオープンリールテープとその価値については、もっと注目されてもよいでしょう。
貴重な新世界音楽研究所のコンサート記録、150回にわたるナゴヤ・ヤマハジャズクラブの録音、ドクターズ・スタジオにおけるプライベート演奏など、今後内容の解析が進めば20世紀後半の日本ジャズの知られざる一面が明らかになり、重要な資料になることは間違いありません。
岡崎市では、この貴重なテープをどのように保存するか、各方面の保存ノウハウを手に入れ、最終的に温度、湿度の管理に優れた日本古来の手法が有効と判断し、お茶を入れる茶箱を特注で作りました。現在、すべてのテープがその箱の中に保管されています。もっともこれらのテープは、聴かれることに価値がありますから、ただ保管するだけでなく、DATに移しかえ、一部内田修ジャズコレクション展示室で公開し、テープコンサートも定期的に開催しています。

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