1993年(平成5年)、内田修氏から岡崎市に寄贈された膨大なジャズレコードのコレクション。その数12,308枚。輸入盤LPレコード4,742枚、国内盤7,566枚。1950年代から1980年代のレコードが、約40年間にわたって内田氏の審美観に裏付けられて集められました。おそらく世界に例のないコレクションであり、非常に価値の高いコレクションです。
LP初期の1950年代にジャズの名門レーベルといわれた〈ブルーノート〉の10インチ盤、同じく著名レーベル〈プレスティッジ〉の10インチ盤など、ビバップといわれるモダンジャズ黎明期のジャズをそのまま音盤に残しており、いわゆるオリジナル盤といわれる輸入貴重盤が数多く残されています。内田氏が敬愛するジャズの巨人チャーリー・パーカーの〈ダイアル〉レーベルの10インチ盤などは、他に類をみない貴重なコレクションと言えるでしょう。もちろん、ジャズ・ジャイアントといわれる数々の巨匠たちのレコードはいうまでもなくコレクションの核となるものです。
また、日本のジャズレコードが多く含まれているのもこのコレクションの特色です。ジョージ川口、秋吉敏子、渡辺貞夫らの活躍で日本のジャズ界が活発になった1960年代のはじめ、まだ誰も気を止めていなかった頃から、内田氏は日本のジャズメンに温かい視線を送り、その活動を見守ってきました。その時期から日本のジャズレコードの収集も始まり、国内盤と言われるものの中に現在第一線で活躍しているジャズメンの当時まだ若かった頃の演奏を記録したレア盤も多く含まれています。
これらのレコードは、すべて丁寧に聴かれており盤面のキズも少なく、温度、湿度などが調整された部屋に一枚ずつビニール袋入れられ、木製ラックに垂直に保管されたため、30〜40年たった今も初期の状態の美しい姿を保っています。

レコード収集の基準のひとつとして内田氏は、自分自身の興味と関心のほかにミュージシャンのために収集するということがありました。有望な新しいヴォーカリストのレコードがみつかると、同業ヴォーカリストが岡崎に立ち寄った際、必ず聴かせて参考にさせたといいます。また、入手不可能なかつての名盤がみつかると、きっと誰が聴きたがるだろうとか、聴かせたら参考になるだろうと考えたようです。自分の興味以前に、まずミュージシャンのためにという動機で買い込んだものが多く収集されました。 女性ヴォーカルのダコタ・ステイトンの『レイト・レイト・ショー』のレコードなどは、よく立ち寄ったミュージシャンに聴かせていたといいます。

学生時代の内田氏は、当時まだ輸入にたよっていたLPレコードを何とか入手しようと、東京神田の輸入レコード店、リズム社によく出かけました。
ある時、夜行列車で出かけて朝早くにお店についてしまったことがあったそうです。ガラス戸にはまだカーテンが閉まったままで人の気配はなく、恐る恐るガラスを叩くとしばらくして二階の窓が開きました。すると店主の村岡さんが顔を出し、窓からひもにつるしたお金が入った竹籠をするすると目の前に下ろしてくれました。そして、そのお金でどこか近くでお茶でも飲んで開店まで時間をつぶしてきて下さいと言ってくれたのです。その後、店に戻ると、村岡さんはニコニコして待っていてくれて、新着のレコードをいろいろ見せてくれたそうです。
そんなやさしい心づかいに触れながら集めた輸入LPが青年時代の内田氏のコレクションとなり、現在、岡崎市の収蔵品になっています。
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