アラン・シルヴァの目指す新しい音響世界
T.1970年代に入るに当って起ったエポック・メイキングな出来事
正直に言って、いわゆる前衛ジャズを好んで聴いておられる皆さんですら、(少なくとも、このアラン・シルヴァに興味を持たれる方はそうだと思うのだが)1967年以後のジャズの動向は、失望と当惑の繰返しであったと思うのだが如何なものであろうか。1964年秋「10月革命」によって口火を切られた前衛ジャズ運動は、続く「12月の4日間」と呼ばれた「ジャズ・コンポーザーズ・ギルド」の連続リサイタルによって軌道に乗り翌年初頭のオーネット・コールマンのカムバック、更に略時を同じくした、E.S.P.レコードの発足により、華々しく、そして確固たる道を歩み始めたように見えたのだった。その頃の皆さんは、次々に出現する新人達の革新的なサウンドに新しい感動を覚えながら、聴きなれぬ名前を覚えて行く嬉しい困惑に悩まされたことだと思うのだが―――こんな書出しでこのライナー・ノートをスタートしたのは、ここで、くどくどと前衛ジャズのたどった道をなぞらえるためではなく、一旦私達ジャズ好きの興味の対象から外れかかったような感じすらした一時期の前衛ジャズ界に、新しいジェネレイションを迎えるに当り、先の10月革命に匹敵するような注目すべき動きが見られるようになったことを述べたかったからである。それはご承知のとおり、ヨーロッパ・ジャズの目覚しい台頭であり、一方シカゴ前衛派と称せられる黒人新鋭ジャズメンの地道な活動であり今一つ、レコード界にあっては、このLPを含むフランスBYGのセンセイショナルな発売である。
就中BYGの企画が、特に焦点を@シカゴ前衛派と、Aアーチー・シェップ、そしてBドイツ、イギリス、オランダに比較して陽の目を見ることの少なかったフランス前衛ジャズメンに合わせていることに強く注目せざるを得ない。
BYG第11弾として皆さんの手元に送られる、このアラン・シルヴァのオーケストラの演奏は、まさにその三者を集約的に結集した野心的作品と言う意味で、特に関心を持つべきであろう。