何年か前、ビクターの企画で、「プレスティッジ・ゴールデン・ジャズ・シリーズ」というのがあった。
「何故、網の目に洩れたんだろう」という感じの面白い盤を一挙に売り出して、これが大当りをとった。
安かったせいも勿論あるが、内容も又大変秀れていたのだ。所が折角の、この企画も、プレスティッジの発売権が他社に移って中断してしまった。当時このプランを推進したビクターの下田ディレクターはとても残念だったに違いない。
今回久し振りで、プレスティッジがビクターに戻り、早速下田さんは活動を開始した。そこで僕の所へも、R.ガーランドの「グルーヴィ」のライナー依頼があったのだが、何せ筆の遅い僕のことで、大巾に締切に遅れて書き終えたのだった。再三の催促で、下田さんもいや気がさして、もはや注文はなかろうと、内心のんびり構えていたら、書き上げた原稿も未だ届いていないのに、続いて又担当してくれないかと言うんだねえ。その頼み方が、下田さんらしくて良かった。
「今、お願いしたいのが、二三あるんですけどね。キャノンボール、バリー・ハリス、J.マクリーンこの三人の内で、どれでも書き易いのを選んで下さいな」
電話口での僕は、直ぐに答えたものだ。
「あっ、J.マクリーンが良さそうだなあ。ものは何ですか?」
「予定してるのは“ア・ロング・ドリンク・オブ・ザ・ブルース”なんですが」
「薄いブルーのジャケットのですね。あれ、大好きなんだ。よーし、やってみようか」
まあ、そんな調子のやりとりだった。
例によって、妙な書き出しだけれど、つまり僕としては、直ぐにJ.マクリーンを選んだ理由――そのあたりからこの文を書きはじめてみようかと思っているのだ。