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all right/鈴木勲


 「オマサン」の多才ぶりには、びっくりしてしまった。
「急な話で申し訳ありませんが、オマサンの3枚目が出来あがりましたから、又、ライナー・ノートをお願い出来ませんか」

 これは昨年暮にかかって来たTBMの藤井さんの電話。実の所、年末迄に仕上げたい原稿をかかえた僕は一向に進まぬ筆に、青息吐息の有様で―。
「えヽ、3枚目を吹込んだっていう話はオマさんから聞いてはいますけどねえ。聴くのは楽しみなんだけど書くのはどうもねえ。だって、前の2枚も書いたし第一ネタ切れですよ」「いや、お忙しいのは分ってますよ。正月明けの10日頃で結構ですから。それにオマサン自身が絶対先生にお願いしてくれって言ってるんですよ」

「うーん。本当にあいつ、そんな事言ってたの?そいつは、まあ嬉しい話だけどなあ。とにかく一度聴かせて下さいよ」
「どうもありがとうございました。えヽ早速レコード送りますから。宜しくお願いしますよ。では良いお年を。」

 参ったなあ。何時の間にか承知したみたいになってる。
 そう言えば、藤井さん知ってるかなあ。僕のライナー・ノートは縁起が良いみたいなんだ。愛称「オマサン」こと鈴木勲の記念すべき第一作の「BLOW UP」も、暮に出た
富樫君の「SONG FOR MYSELF」も僕が書かせてもらってる。そして、どちらもジャズ・ディスク大賞の「日本ジャズ賞」を貰ったんだ。まあ、これは冗談で僕のライナーにそんな効能がある訳ではないのは当り前なんだけれど、偶然にしては嬉しい出来事だものねえ。

 それにしても、こないだのオマサンの電話だと「一人でいろんな楽器やってみましたから、一度是非聴いてみて下さい」なんて言ってた。どんなのが出来上ったか楽しみなんだが―

 それから間もなく、届いた速達便は色気もないジャケット抜きの真白いラベルのテスト盤。それに手書きの吹込みデータが、コピイされて添えられている。それを見ると誰でもきっと「おや」と思うだろう。「ベースのオマサン」がベースを弾いていないんだから。思はず「こりゃ、やったねえ」とうなってしまった。


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