全3頁NEXT閉じる
.

PAGE1

BLUE BURTON / ANN BURTON

初めに

 あなたは、この小文をどんな風に読み始められただろうか―――。ある方は、きっとレコード店の店先で、しゃれたジャケットに目を止めて、何気なく手に取って見ていらっしゃる事だろうし、又別のあなたは、音楽誌のレコード評に目を通して買い求め、心を躍らせて、最初の針を落としながら、ジャケットをお持ちになっていらっしゃる事だろう。でも、きっと共通しているのは、初めて耳にするものに対する或る種の期待で胸をふくらませておられる事だと思う。そこでお願いしたい。ひとまず、ジャケットを下に置いて、黙って彼女の歌に耳を傾けて頂けないだろうかと。

聴の後で

 さて、どんな感じで聴いて下さったかしら?「うん、意外にいいじゃあないか。何か暗い所が気になるけど―――」とか、一寸うるさい方は「おや、アニタ・オディと似たムードがあるな。そういえばスリー・サウンズと一緒に歌ったのに、こんなのがあったっけ」とか―――。でも、きっと「ディクションもフィーリングもリズムの乗りも本物だ。それにしても、これが本当にヨーロッパの、それもジャズをやっているなんて、あまり聞いた事のない、あのオランダで育った歌手なんだろうか?」という素直な疑問をお持ちになったのではなかろうか。

最近のヨーロッパのジャズとヴォーカルは

 所で数年来ヨーロッパのジャズ・レコードを集めている私自身、不思議に思っている事がある。それは植草甚一氏がスイング・ジャーナル「モダン・ジャズ読本’70」の中で、ヨーロッパのジャズを取り上げていみじくも指摘されている様に、ジャズ・ジャーナリズムをリードするアメリカの評論家達が、ヨーロッパの新しいジャズを聴いていないのではないかという点だ。これは、すでにあなたも御承知の如く、1969年8月恒例、国際ジャズ批評家投票での、ヨーロッパ・ミュージシャンのものすごい上位進出を目のあたりにして、主催したダウン・ビート誌の編集長ダン・モーゲンスターン自身驚いて、「アメリカで知られているのは、ベースのニールス・ヘニングとドラムのダニエル・ユメール位だ。」と告白した事でも分る。それにしても、尚その後も、ダウン・ビートを含めて、アメリカの専門誌がNON−AMERICAN JAZZの重要性を認めながら、一向、読者の目を向けようとしないのには、首をかしげたくなる。その点、我が国では、積極的に、グローバルな視野に立って、ジャズの流れをとらえようとする動きが盛んな事は、誇らしい事ではなかろうか。とはいうものの、ことヨーロッパのヴォーカルに関しては、あまり紹介されているとは申せまい。


全3頁NEXT閉じる