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SONG FOR MYSELF/富樫雅彦

“再び飛び立つ富樫雅彦におくる”

 あるいはお目に触れた方もあるかもしれないが、僕はここ暫く前から敬愛する植草甚一さんが、責任編集をなさっている風変りでユニークな雑誌「宝島」に、「ジャズメン−愛すべき仲間たち」と題する連載ものを引受けている。これはかしこまった人物論ではなくって、僕との個人的交友を通じてのジャズメン達の、生の人間像をとらえて文章にして欲しいという注文だった。だから、僕の方も気楽に言いたい放題の事をあけすけに書かせて頂いている。その第3回に富樫雅彦を取り上げて御紹介したのだが今回、このレコードに添付される筈のこの文章は、いわばその続編みたいなものでなるべく重複しない様に心掛けるつもりだ。だから、出来れば「宝島」10月号の方も目を通して頂ければ幸いと思うのだけれど−。
 所でこの原稿依頼があった時、「レコードの内容、つまり演奏を通して表現したかった点については富樫さん自身の口から語って頂く予定になっていますから、おたくの方は富樫さんについてのもろもろを御自由にお書き下されば結構です」というお話だった。大変ごもっともな御意見で第一、富樫君自身が一生懸命にまとめ上げた構想に第三者がとやかく注釈を加えても意味のない事だし、それは本人の口から聞くのが一番良いに違いない。それに音楽家がしゃべる事柄は、時にははっとする様な鋭い意見があってとても面白いし興味あるものなのだ。だから僕自身も富樫君の語り口を、とっても楽しみにしているという訳なのだ。
 話を戻して、さっきの「宝島」に富樫君の事を書いた後、最後の手術を終えて自宅に帰っていた彼に早速電話をしておいた。
 「あのね。『宝島』っていう名前の雑誌知ってる? 植草さんの作ってらっしゃる面白い本なんだけどね。そこに君の事書いたんだ。何だか昔の話が中心で忘れちゃった様ないやな事柄も触れちゃったみたいだけど、もし良かったら一度読んでくれると嬉しいんだけれどなあ。
 もう直ぐ出る筈だからだから奥さんに頼んで買って来て貰いなさいよ」どうも勝手なもので、文句を言われない先に予防線を張っているみたいだ。一寸気の引ける様な言い草だが、彼はそんな僕の電話に答えて、「本当ですか。嬉しいなあ。早速本屋さんに頼んでおきます」
 それから暫くたって今度は彼の方から電話があった。「先生、(彼は医者である僕をそう呼ぶのだ)。読みましたよ。とっても良い事が書いてあって嬉しかったです。何だか誉められ過ぎみたいでてれくさいですけど。プーさん、そんな風に言ってましたか。あいつ、そんな気あるんかなー。本当にどうもありがとうございました」今度は僕の方が面くらっちゃう番だ。そして正直な所、「あゝ富樫君はやっぱり素直でいい男だなあ。」って感心したものだった。

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