全4頁NEXT閉じる
.

PAGE1

FIREBIRD/森剣治

(I)「テナー・バトル」と森剣治

 先日(52年3月11日)僕達のジャズ愛好クラブの主催で「テナー・バトル」と題した自主コンサートを行った。1964年以来、毎年4ないし5回のライブを実行してもう数十回を重ねた事になるが、企画を担当する僕としては出来るだけ既成のグループに頼らず、「夢の共演の実現」という形で楽しんで頂くのを基本的な構想として来たつもりだ。勿論これにはミュージシャン達の協力と、スタッフとなって無欲で協力してくれている若者達の支えがあればこその話だ。話はずれたけど、その3月のコンサートには4人のテナー奏者を招く事にした。スタイルの異なった人達を色々組合わせて新しいものが生れればと思ったのだ。
 嬉しい事に日本のテナー界は松本英彦をはじめとして、この所中堅、若手の優秀な人材がどんどん進出して来ており、その中から4名を選出するのはかなりの難題であった。
 結局、異論はあろうが僕が出演を依頼したのは宮沢昭、峰厚介、中村誠一そして森剣治の4人であった。
 所で、森剣治を日本を代表するテナー奏者の一人と考えた事に対して、おや?と首をかしげた人もいるんではないかな?そう、大多数の皆さんは、森剣治が秀れたアルト奏者である事は御存知でも、「テナーを吹くなんて知らなかったよ」と仰有っても無理はないのだ。それ程、彼は長くアルトに専念して来たし、(最近ではマルチ・リード奏者としても立派な仕事をしてはいるものの)ことテナー・サックスに関してはレコード吹込でも、公開のコンサートでも殆んど、接する機会がなかったと思われるから当然の話なのだ。
 つまり、このレコードは、森剣治が長い、ひそかな修練の後、初めて自信を持って、テナーという楽器に挑戦し、その力量を皆さんに御披露しているという次第なのだ。又、リーダー・アルバムという意味では、他にTBMのソロ・アルバムはあるものの、あとは、OFFBEAT RECORDに1枚あるばかりだから(これもアルトを吹いている)この作品は色々な面で森剣治個人にとって、記念すべきものだと言う事が出来るのだ。
 所で、この大切な作品のライナーが僕の所に依頼された理由は、彼が僕の住いに近い名古屋に在住しているためという他に、もう一つ、彼の長年の努力と成長の道のりを身近にあって、見つめて来た一人であるためだと解釈している。そこで、まず彼の生い立ちなどからその人間味に触れてみようと思うのだ。

全4頁NEXT閉じる