(1)「金井英人」は幻のベーシストであるか?
いきなり現役のミュージシャンを幻あつかいにしては本人に気の毒な様な気もしないではないが、公平に見て、金井英人が、いわゆるジャズ・ジャーナリズムの世界で話題の中心とされなくなってから久しい。実際、現在、若いジャズファンの間では既に「銀巴里のセッション」はおろか「ギャラリー8」ですら「幻の演奏、或いはジャズ・ズポット」と見られているのであるから、これも時の流れかも知れない。然し今このLPでの演奏に耳を傾ける時、「金井英人いまだ健在なり」の感を深くして、彼の一貫して持ち続けている姿勢を再認識しようとする人々が必ずや数多く現われるに違いない。
この事を更に深く理解するために、ここで、日本のモダン・ジャズ史上、もっとも重要な出来事の一つであった、1960年代前半、金井英人の起したムーヴメントに是非共解れる必要があろう。